パラレル述ベル。

取り留めのない事象を、徒然なるままに。

ぐるぐる廻るは世の常ならむ。

 

コインランドリーにパンツを突っ込んで、物想いに耽っていた述べた。です。

 

深夜のコインランドリーって、どうしてこうも情緒をくすぐるのでしょう。丑三つ時のコンビニもまた然り。自分が夜型ニンゲンだと思春期にはわかりきってしまい、天辺を跨いでからが私のゴールデンタイムなのです。

 

そんな活動時間帯にぐるぐる回る洗濯機を目の前にして、ふと学生時代に友人と2人、”旅”と称して冒険していたことを思い出しました。

 

初めて旅をしたのは中学生時代。何をするわけでもなく友人と自転車を転がしていると、何処に続いているかわからない道に迷い込みました。

 

『この先ってなにかあったっけ?』

 

『わかんね』

 

『いってみるか』

 

そんな些細な好奇心で始まった旅は面白そうな道に進むことだけをモットーに、回数を重ねる毎でその距離は伸びていきました。

大学時代には、何故か葛西臨海公園で朝日を見ていたものです。その旅はお盆も過ぎた暑い夏の日で、前日の夜から1日かけて走っており身体はクタクタ、地元に着いた時点で帰宅するのかと思いきや、成人男性が2人、パンツ一丁で川に飛び込んでおりました。どうりで精神年齢が上がらない。

 

先月地元に帰った際、そんな友人と深夜に何をするわけでもなくドライブをしていると、既視感のある風景が流れてきて、“旅”の話題になりました。

 

『あれ?こんな感じの道通ったことなかったっけ?ほらあの…』

 

『…ああ。案山子がいた時の?』

 

幾度となく自転車を走らせていた日々。私たちの中でひときわ印象に残っている旅がありました。半袖であったことから季節が夏であって、携帯がまだガラケーだったことから中学生の頃とまではわかっているのですが、今までその旅の道程を探そうとしても一向に見つからなかったのです。

 

いってみよう。

 

その夜、私たちは断片的な記憶を頼りに、久しぶりにその旅路を追ってみることにしました。

 

…… 

 

『あの不気味で鳥顔みたいな案山子がいたのはひらけた田んぼのとこだったよね。左手に工場もあったな。』

 

『そんな感じ。田んぼの中に道が通ってて、その道の途中に高架みたいのもあって。高速道路の下だったのかな。あの時はとんでもない土砂降りに遭ったよね』

 

『そうそう。あと坂になった住宅街も通った。すげぇ良い場所だったな。そこにゴルフの練習場みたいなデカいネットが張ってある場所があったような』

 

『よく覚えてるな。雨上がりにどっかの民家の前で、ご自由にお持ち帰り下さいって花が置いてあるのを2人して持ち帰ったのも覚えてる』

 

スマートフォンの地図を駆使し、めぼしい箇所を回る。しかし似たような場所は見つかっても、記憶にある景色はどうにも見つからない。いつしか街灯の無い田舎道に霧まで立ち込めてくる。五里霧中とはまさに。

 

結局3時間余り。目当ての場所の1つも見つからず、モヤモヤしたままコンビニ前で煙草をモクモクさせる。

 

『諦めるか。朝になっちまう』

 

『だな。でも見つからなくてもいいのかもしれない』

 

友人はそう言って、寒い寒いとそそくさ車に乗り込んでしまった。

 

年齢を重ね様々なことを知り、忙しなく流れていく変わらぬ日常。いつしか忘れかけていた未開の地を見つけた時の高揚感。今にして思えば大した風景でもなく、珍しくもなんともないモノだったとしても、あの頃の私たちにとっては全てが新鮮で刺激的な景色に映ったのだと。

 

また探せばいいか。

 

煙草を揉み消して車に向かう。

 

この瞬間の足取りだけは、”旅”を始めた童心の頃となんら変わらないものであるような気がした。

 

……

 

朝じゃないか。

 

もう寝よう。

 

皆様行ってらっしゃいませ。

 

又後程。